埼玉県議会の6月定例会で、「地方消費者行政の維持強化のため国の財政支援の継続・拡充を求める意見書」が採択されました。同様の意見書が、吉川市、戸田市、春日部市、上尾市、草加市、飯能市、富士見市、松伏町でも採択されています。
埼玉県議会で採択された意見書は下記の通りです。
地方消費者行政の維持強化のため国の財政支援の継続・拡充を求める意見書
消費生活センターは、消費者問題専門家の資格を有する消費生活相談員が、消費者法制度の知見と最新の相談情報を活用して消費者被害解決の支援を行う相談機関である。消費生活センターに寄せられた相談情報は、全国消費生活情報ネットワークシステム(PIO-NET)を通じて全国で共有され、消費者被害防止の注意喚起に利用されるほか、法令違反業者の指導・処分や法制度の改善に活用されており、我が国の消費者行政の情報基盤となっている。
全国の消費者相談件数は年間90万件前後で高止まりしており、近年は、高齢者を狙った悪質訪問販売業者による屋根・床下工事被害、インターネット上の虚偽・誇大広告による詐欺的定期購入被害など、手口の悪質化・巧妙化が顕著となっている。
他方、消費生活相談員については、高度の専門性が考慮されていない不安定な地位と処遇が改善されず、相談員の高齢化が進む中で新たな担い手の確保が困難な事態が全国的に深刻化している。
国は、相談員の人件費にも活用できる地方消費者行政強化交付金により、消費生活センターの相談体制整備や消費者被害防止の各種取組を支援してきたが、この交付金は令和7年度末をもって基本的に活用期限を迎える。交付金措置が終了すると、財政力の弱い多くの地方公共団体は消費生活相談体制の維持が困難となるおそれがある。
また、高齢者見守りネットワークの構築や適格消費者団体及び一般消費者団体の育成・活動支援・連携など、地方消費者行政による消費者被害防止施策全般には、国の継続的な財政支援が必要である。
さらに、PIO-NETが令和8年度に更新時期を迎える。国は、新システム移行に必要な初期費用は交付金で措置すると表明しているが、セキュリティ対策や回線使用料などの経常的費用は地方公共団体の負担としている。しかし、安定的なシステム運用のため、これらの費用も国の負担で措置すべきである。
地方消費者行政は、地域の消費者へのサービスという自治事務の性質がある一方で、消費生活相談業務及び相談情報集約事務、悪質事業者の指導・処分事務、適格消費者団体の活動支援事務など、国と地方公共団体相互の利害に関係する事務の側面も有する。
よって、国においては、地方消費者行政の体制と施策が維持・推進されるよう、下記の措置を講ずるよう強く求める。
記
1 消費生活相談員の人件費に充てることを含む人材確保及び処遇改善に活用できる地方消費者行政に関する交付金を令和8年度以降も措置すること。
2 全国消費生活情報ネットワークシステム(PIO-NET)の刷新及び相談業務のデジタル化に伴う地方公共団体の設備導入並びにこれらの運営の経費を、国において全額負担する措置を講ずること。
3 地方消費者行政の事務のうち消費生活相談業務及び相談情報集約事務、適格消費者団体の活動支援事務など、国と地方公共団体相互の利害に関係する事務であって国全体の水準を確保する必要があるものについては、地方財政法第10条の適用によりその全部又は相当部分を国が恒常的に財政負担するよう、同条の改正を検討すること。
4 消費者被害防止に取り組む適格消費者団体及び地域の消費者団体の育成・活動支援・連携のために地方公共団体が行う支援事務に対し、財政支援を継続・拡充すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
令和7年7月2日
埼玉県議会議長 白土 幸仁
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣 様
総務大臣
財務大臣
消費者及び食品安全担当大臣
埼玉消団連は、昨年8月と今年3月に、全国の消費者団体とともに、地方消費者行政の充実・強化が維持されるよう、国は、地方自治体に対し、消費生活相談員の人材確保をはじめとする消費生活相談体制の維持・強化と消費者被害防止の各種施策に活用できる交付金措置を継続することを要望してきました。3月の要望書についてはこちらから
また、埼玉弁護士会、NPO法人埼玉消費者被害をなくす会、埼玉県消費生活コンサルタントの会と連名で、「地方消費者行政の維持強化のため国の財政支援の継続を要望する意見書の採択を求める要請書」を6月議会に向けて提出しました。