9月12日(金)、第61回埼玉県消費者大会プレ学習会「米不足はなぜ起きたのか ~お米の安定確保と供給を視点に考える~」を開催し、会場52人、Zoom56人、計108人が参加しました。講師は、一昨年の第59回埼玉県消費者大会食の分科会でもお話しいただいた、加須市を拠点に大規模農業に取り組む生産者、中森農産株式会社代表取締役の中森剛志さんに、米、農業、エネルギーなど幅広い視点で講演いただきました。
はじめに、東京生まれで農家出身でない中森さんが、世界の食料問題を考える中で、日本の米や農業の脆弱性を自覚し、食料安全保障の確立のために農業者を志し、「加須市」を選んで就農したこと、首都圏で農業者を育てて全国に戻していくために、人材教育センター機能も持つことにしたことなど、話されました。
日本の水田農業は穀物生産性が低く高齢化しており、2050年には農家が約10分の1に減少する予測や、現在米の需要が伸びているが、専業農家の減少などにより、生産量は減少しており、もともと2030年に需給バランスが逆転すると予測されていたが、5年早くその時がきていることなど、話されました。
日本のGDPは年々下がっており、2040年代に日本は大国でなく中堅国家になり、農業政策ひとつで、国民が食べられなくなり、政府が転覆する、暴動が起きるなどの事態になる可能性もあるとの厳しい見方もされており、今は経済大国の地位を保っているから、穀物が高騰しようが関係ないが、どういう農業をしなければならないか考えなければ、この先、食料が買えなくなることが起きてしまう、そのため、農業の価値を最大化し、食を守りぬく、日本農業の生産の能力を高めていくことが必要なのだと話されました。
この間の米不足がなぜ起きたのかについても、生産現場の状況や消費者の行動、異常気象がもはや日常になっていることなどから、冷静に分析され、説明いただきました。
食料安全保障の問題だけでなく、エネルギー自給の問題にも触れられ、日本はエネルギーをほぼすべて輸入しており国内自給が必要であること、欧米の農業は自然エネルギーを利用しているが、日本ではエネルギーを自給している農家がいないと話され、自身が太陽光発電によるエネルギー自給を実践していること、エネルギー安全保障は食料安全保障に不可欠であると話されました。
講演後、質疑応答の時間にも、会場から質問が寄せられ、ていねいにお答えいただきました。
中森剛志さんの講演はこちらから視聴いただけます。
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